瑞西人が来た01

姫路城ガイド

ここでは姫路城ボランティアガイドのお話しかしていませんが、更新がほんのたまにしかしていないので、毎回外国人を案内するに至るまでの説明をしなければいけないのではという気持ちになります。

で、今回も説明すると、我々ガイドのメンバーは(姫路城外国語ガイド協会VEGA)チケットブースをくぐりぬけたところで「FREE ENGLISH GUIDE」のサインを持って、入ってくる外国人観光客を待ちます。外国人観光客が多くなったといえどもそのすべてが案内を希望するわけではなく、そのサインを一瞥して通りすぎるということもままあります。また、西洋人が来て勇んで声をかけると英語話者ではないこともよくあることで、何かお互いすんませーんみたいな雰囲気を言葉無しでシェアしたり(こういう時人間みな一緒だと思うのですが)。明らかにラテン系で英語話者じゃないだろうと思って声をかけなければ、私なんかよりはるかに流暢な英語を話す南米人であったり。

今回はそういうラテン系一家六人が私のサインに関心を持ち、一家の長がこのサービスを受けるかどうか私の前で思案するところからの話です。チケットブースを抜けた通路で狭く、ほかのお客さんが通れなくなるとスタッフに注意されるので「はよ決めてよ」と内心で言ってたところ、(後で分かったのですが、六人いれば何人かは英語分からない人がいるので、その人が渋ってたのです)その後ろからお人形さんのような西洋人女性二人が私のサインを目ざとく見つけたわけです。すかさず「Would you like this?」と一家の前でその彼女らに猛然アピールをする私。彼女らは「是非!」と目を輝かせており、もし彼女らとだけの案内であればさぞかし楽しい案内になるであろうとこの時思ってたのですが、一家を置き去りにするのも失礼なので、「もし決まらなかったら、彼女らの後についてきて、面白くなかったらスルーしていくのはどう?」とこっちから言って、結局八名の大所帯で出発するのでした。

一家は南米アルゼンチンから。これまで400回以上案内をしてきましたがつい前々回のガイドで初めてアルゼンチンの方を案内したところで、このように今まで全くなかったのに連続で出会うのを不思議に思います。お歳暮にミカンの箱を連続でいただくような、あ、餅とか。アルゼンチンは漢字では亜爾然丁と書くみたいです。

今回の主役は、しかしながら、女性二人組の方。こちらはスイスからの学生で二週間の日本滞在です。一目見てインテリそうな彼女たち、日本の文化と、そして若い女性らしく日本の食事に非常に関心があると言っていました。結局亜爾然丁組がグイグイ質問してくるので彼女たちの好奇心を満たすことができたかどうか分かりません。そしてそもそも最近の私がラテンルーツの言語(スペイン、フランス、イタリア、ポルトガルなどなど)に関心があるので、アルゼンチンの一家の長との話も非常に盛り上がりました。

それにもかかわらず、私がこのスイスの二人組を主役としたいかという理由は、彼女たちの大学の専攻にあります。ずばり「archeology」、考古学。私が氷河期以前の人類の歴史にはまっていたこと、それを英語のYouTubeでひたすら見ていたこと、カギとなるのが地中海であること、など興味の対象がバッチリ合っていたからです。まさに「Mediterranean(地中海)」とか「ice age」とか彼女らが出すキーワードにこんなにときめいたことはありません。

結局そういった話を聞くほど余裕はなくこのツアーは終わってしまいました、地球の裏側から来た一家のほんの数分のかち合わせにより…とはいえ学問的な英語をリスニングする能力がこちらにあるかどうかは分からないのですがね。

さてさて、archeologyはancient「古代の」とlogy「~学」でできた単語です。ancientの語源はante-「前に」というものがあり、その接頭辞ante-を使った英単語もあるにはありますが、メジャーなものは見当たりませんでした。しかしながら、「anti-」も元々は一緒だったという情報があり、「敵対する、アンチ」もよく考えてみれば前に立ちはだかるというイメージなのでまあまあ納得できます。その中で見つけたanticipate「見越す、前もって述べる、予想する」などは、今挙げた単語たちと同根とすると、遠いですがヨーロッパの言語の壮大な歴史を垣間見る気分です。少しだけイタリア語をかじり始めた私としてはantianni「お年寄り」がドンピシャで嬉しかったり。(annoは年の複数形)

そしてMediterraneanはmediがmediumとかの「中間」、terraがterritoryとかの「土地」、まさに「地中海」なわけですが、このたび語源辞典を読み返すと、世界の中心の海という意味だということで、人類の歴史があの海を中心に栄枯盛衰してきたことを感じることができました。それだけにやはりスイスからの考古学専攻学生と話せなかったのは残念!

案内したお客さんとは忘れずに写真を撮るようにしているのですが、途中で雨が降ってきたこともあり完全に忘れていました。もう帰ってしまったかとだいぶ経ってからお土産屋をのぞくとスイスの二人はまだ物色中で、外で気付かれないように待っているのがストーカーのようでしたが、出てきたところでお願いして撮ることができましたとさ。

コメント