亜米利加人が来た05

姫路城ガイド

姫路城に来るのにベストな季節はいつかとよく尋ねられます。それが春ならば「今です、桜こそ日本の魂、これを見るためにはるばるやってきた」それが夏ならば「今です、天候が安定しますし、緑が美しい」それが秋ならば「今です、私は紅葉が桜より好きです」それが冬ならば「今です、観光客がいません」と方便を使います。でも本当に私がいいと思うのは冬です。どの観光地でもほかの人に気を遣わずゆっくり見たいからです。姫路の冬なんて寒さもたいしたことないですし、今がベストシーズンです。

そう思ってあえてこの2月にハネムーンを敢行したニューヨーク、Brooklynからのカップルを案内しました。彼は大学で日本の歴史を専攻し、それは特に明治維新以降の日本史なので姫路城の時代とは関係なかったのですが、それでも徳川氏、豊臣氏、天皇家などの知識があれば話が深まります。そうなるとこちらは俄然大変になりますが、エキサイティングな時間にもなるのです。

余談ですが、ガイド仲間との立ち話で、「今日二回ガイドして、一回はフロリダからの青年一人旅、ちょっと何言ってるのか分からなかった。もう一回はオランダからのお医者さんカップル、聞き取りやすい英語で楽しかった」みたいなのがありましたが、先日私も似た経験があり、オーストラリアの親子で、子供(といっても青年)の言ってることはまったく分からず、その英語を母親が簡単な英語に翻訳して意思疎通をするというものです。母親にそうされている時点で自分の話し方の不具合を理解しないところが若いですねー。これが分かり出すと大人というか老けたというか。でもこんなことは日本語でも英語でもあるあるです。

となるとこのニューヨークからの見るからに上流そうな二人は初めからその話す言葉が分かりやすい。これぞ我々が習った英語なんです。どれくらいわかりやすいかというと、例えば「20世紀に各国が中国の領土を分割した」と言われたら、普段であれば全神経を研ぎ澄まして何の話をしているのか推測するのですが、「分割した」のところの「carve up」が初めて出会うphrasal verbでありながらその場で聞き取って意味が分かるほどです。またこの方、よほど日本旅行への予習がなされており、お城のことはさておき3時間近く話し続けたのですが、それがまったく苦痛でなくすんなり頭に入ってくる感じは大変心地よく、英語の勉強をしていてよかったと思えるものでした。

もうひとつ面白い今回のエピソードとして、私が石垣の説明をしているときに、一羽の鳥が目の前に現れたのですが、奥様はそれに気を取られ、彼女はバードウォッチャーでしたが、しかし私の話を止めてはいけないと黙っていたところ、私があれはrobinですね、と一瞬はさんだわけです。すると「話を止めたらいけないと思ってたので教えてくれてありがとう、あんなのは見たことないので」と。この時期お城にジョウビタキ(正しくはredstart)の雄がよく来ます。そのオレンジと白黒の配色は日本の冬の風物詩。夏は朝鮮半島に帰るので、向こうでは夏鳥、日本では冬鳥だと言うと、「フロリダみたい」と。そっちではそんな感覚なんですね。

最近NHKのダーウィンが来たで、エンパイアステートビルに住むハヤブサ(falcon)の回があり、その話などでも非常に盛り上がりました。ハクセキレイも近くにおり、あれはwagtailでコンビニの駐車場でよく見ますなどと教えてあげました。

この奥様と鳥の話だけしたかったくらいですが、あとは旦那様の日本好き好き話で時間を終えました。どれくらいすごかったかと言いますと天守最上階で他の英語話者が「いったいどうしたんだ?」奥様「私のパートナーが私たちのガイドに知ってることをひたすらしゃべっている」と心配されるほど。私が何か絡まれているように聞こえたのかもしれません。私自身は先ほども言いました通り非常に有意義な時間だったのですが。

彼らが来たBrooklynのbrookは使ったことないですが小川の意味があります。これにはbreakから来ているという説があるらしく、もともとの意味は「that which breaks or bursts forth out of the earth」みたいな感じとも書かれています。オランダにDu. Breukelen(英語だとbrokenland)という小さな村があるようで、調べてみると確かに語源は一緒とウィキペディアに紹介されていました。まるで東北の自治体が「北緯40度、ニューヨーク、北京と同緯度の町」と喧伝しているかのようです。

広がりがなかったので同じ小川で思いつくstreamも調べましたが、これもなんとなく想像がつく程度で、streu-はto flowの意味です、と。こちらは地形的な意味よりは「流れ」というニュアンスなんでしょう。日本語と同じですね。

というわけで非常に楽しい時間を過ごしたわけですが、その後ガイドの詰め所にて「おい緑青舎、ブログの更新が滞っているじゃないか」とご指摘を受けたので、今日は頑張って書いてみたのでした。

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