亜米利加人が来た03

姫路城ガイド

前回イギリス人が来た時に、私が「午前は姫路城でガイド、午後から塾で学生たちに授業」と言うと、「いつ奥さんに会うの?」と言われ、「まあ帰ってから20分くらいは話します」と答えると、Absence makes the heart grow fonderだな、と。

リスニングすらできない私がまごまごしているとご主人がグーグルに向かって「Absence makes the heart grow fonder」と美しいイギリス英語で発声、出た日本語が、「不在は心をより懐かしくする」とてもぎこちない日本語ですが、言いたいことは分かったのでまあそういうことだ、日本語にはこれに対応する表現はないが意味は分かると伝えました。中学英語で習う「be fond of~=like」の比較級ですが、いまだにfondという単語を会話でも作文でも使ったことがないですね。というわけでまずfondを語源辞典で調べてみると、1愚かな、2情け深い、3好きな、4溺愛する、などが出てきます。そして語源の仲間にfunがあり、楽しみという意味よりは元々make fun ofの「からかう」が最初とあるので、なんとなく非常に情に訴えるような言葉であることは想像できます。なので「不在は心を懐かしくする」というヘンテコな日本語も、グーグルがどうにかそのニュアンスを表現しようと苦労しているのが伝わってむしろグーグルのすさまじさを感じたりもするわけです。

さらに数日間この表現について考えていたのですが(ネイティブに直接教えてもらうにはあまりにも人情溢れる言葉であるので)これは、日本語にもあるではないか!と気付きました。郷ひろみのよろしく哀愁の中のさびの部分「会えない時間が愛育てるのさ」。私の世代からはちょっと古すぎる歌なのですがよくぞまあ思い出したと自分をほめたたえたわけですが、それでは奥さんと会えない状態で奥さんへの愛情を深めているということになり、日本人的にはそんな直接的にしめっぽいことを言わないので、となると「不在は心を懐かしくする」は真に的を射た訳語、感情を表面に出さない日本人の内面の動揺までをも表現した翻訳となるのかもしれません。もはや人類はAIにすべての仕事を持っていかれる時がきました。

余談はさておき、今回はソビエト時代にウクライナに住んでいたアメリカ人夫妻と出会ったときの話です。フィラデルフィアから来たと聞いたので、まあ普段通りにアメリカ人を案内していたのですが、なんだか夫妻で話すときは違う言語のような気がしていました。しかし私にとっては彼らの英語は全く違和感のないアメリカ英語で、コミュニケーションもすこぶる自然にいってたので何も問題はありませんでした。

しかしツアーの終盤に、「アンタの英語は本当に上手だ、我々がアメリカに来た時は全くそんなふうに話せなかった」と自分たちがウクライナ出身であることを教えてくれました。ウクライナと聞くとインタビューしたいこともたくさん出てくるのですが、以前イスラエルから来た夫婦にパレスチナのことを尋ねたとき(2023年以前)ものすごい剣幕でパレスチナ人の悪口とユダヤ人の歴史を(モーセからバビロン捕囚、ホロコーストまで)延々まくし立てられたことがあるので、封印。キーウに住んでいたということだけ聞けたので、日本ではキエフと呼んでいたのが戦争以降キーウに変わったことを伝えると、「ソビエト時代はロシア以外の地域にもロシア語を強制していたからだろう」とのこと。ウクライナ独立後も日本ではソビエト時代のまま学校地理を教えてきたのでキエフのままだったわけです。

ん、では高校世界史で習う「キエフ大公国」は今後どうなるのでしょうか?「キーウ大公国」になるのでしょうか?まあここまで言うと偏屈なのでやめておきます。彼らはしかし、今や自分たちのアイデンティティはアメリカ人であるとのことで、戦争についても、もちろんかわいそうだとは思うが、外国人としてそれを見ているとのこと。世界にはいろいろな立場の人がいるわけで、彼らにコメントを要求するのも失礼かと思いました。

identityの語源は特に派生するものがないのですが、idem(こんな英単語もきちんと存在していて「同上の」、ibidem「同じ個所に」、あとはidentify「特定する(動詞)」、identifical「同一の(形容詞)」などが掲載されています。面白かったのがtandemという単語も参考に載ってあり、「縦並びの二頭引き馬車」、さらにはtandem bicycle「二人乗り自転車」とあり、そういやタンデムという日本語を見たことがあったがこれで覚えられました。

そういえばこの頃はチップをいただける機会が増えており、それは我々への評価として嬉しく受け取っていますが、これは一緒に過ごした時間ではないようです。彼らかも程よい額のチップをいただきましたが、彼らはツアー中ずっと「本当に楽しい」と連呼していましたが、その割には先へ先へ行こうとするタイプで、私が話したいことの三分の一はカットしましたが、それでも彼らにとっては大満足だったようです。世界にはいろんな人がいるということです。

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