緑青時間3月号

 受験の結果が少しずつ出始めています。今のところ順調で、高校の推薦入試や私立大学で良い結果が出ています。合格したみなさんとそのご家族さま、本当におめでとうございます。そして来月号ではメインの国公立大学と兵庫県の高校入試の結果、そして毎年恒例の総括をお送りします。気分よく総括できるようにあと少し、受験者は継続して勉強しましょう。

 先日の数十年に一度の大雪は、塾でも授業を取りやめるほど、マイルドな播磨地方にも各所に影響を与えました。その後数日にわたり道路に残った雪は氷となって、特に日中太陽の当たらないところでは通行者に危険を感じさせました。かくいう私はH中学校の前を自転車で通行中いかにもツルっと転倒しました。幸いケガもなく、誰にも見られてもいなかったので(こっちのほうが心配)良かったわけですが。

 その雪の日の朝は、姫路市内の山でも冠雪がふもとからでも見てとれました。私の住まいは書写ですが、これはすごいことになっていそうと早起きして自宅から歩いて書写山に登ってきました。あの量ですからおそらく京見の山でもさぞかしだったでしょうが、書写山でも登山口から数十cmは積雪があり、自宅から雪山ハイクができてとても興奮しました。

 技量のない筆で文章化すると、あの稀有な自然をダメにしてしまいそうですが、まだ降り続く雪雲の空と登山道や樹木に積もった雪の白色に覆われると、自分だけの世界に包まれるというありきたりな文学表現が実感できました。ピンと張ったとか白銀とかさまざまな形容がありますが、雪が降らない地域の人間にはそう言われてもピンとこないわけでしたが、まさに包まれてみなければ分からないものなのです。そして時間が止まったような感覚から我に返すのは、枝に積もった雪が重みに耐えきれずバサっと落ちる音と煙のような雪の粉。姫路程度の雪がこれほどダイナミックな現象となるのかと、それが起こるたびに、普段とは違う一日がありがたく思われました。さらには小鳥、雪の中では現れたすべての鳥が黒く見え、これは背景の白とのコントラストの問題なのでしょうが、通常枝や茂みに隠れて見えない小鳥が姿をさらけ出しているかのように見つけやすかったのも驚きでした。真っ黒の小鳥はめったにいないですから、これは初見の鳥だ、雪が積もって鳥の行動が変わったんだと息まいて確認しようとしましたが、どうやらそれはメジロ(ウグイス色といわれる緑色の小鳥、目の周りの白い毛が名前の由来であり特徴、ちなみにウグイスは緑色ではなく薄茶色です)で、雪のせいでこんなにも見え方が変わるのもまた一興です。さらには野生動物の足跡もくっきりとついており、何の足跡か分かりませんでしたが、登山道の下の方から、ほぼお堂のあるところまで人間の登山道を歩いていることも分かりました。けものみちとは言いますが、動物たちにとっても道は歩きやすいのでしょう。ちなみに鳥たちも人の作った大小の山道を利用します。木々に邪魔されず移動できること以外にも、見晴らしがよいので落ちている食べ物を識別しやすいのかもしれません。

 そんなこんなでお目当ての三つの堂(トム・クルーズで有名なところです)までやってきました。すでに先客が足跡を付けていたので手つかずとは言えませんでしたが、人工物と自然が織りなすなんとやら・・・をしばし堪能しました。歴史的にはこんな日にもここで座禅や読経に取り組んだ修行僧がいたはずでしょう。さて彼らは自分のやっていることにムフフと感心しながらさらにテンション高く修行したのか、あるいはどんな天候であっても心にさざ波を立てず淡々と勤しんだのか。ただし今日では、その日は土曜日でしたが、ロープウェーからのお客さんが増えると、通常御朱印書きに忙しい住職が上下ジャージを着て、空圧で落ち葉を吹き集める機械で、積もった雪を除去していました。せめて作務衣でも羽織ってやってくれればまだしも、これには少し興覚めでした。掃除機の十倍ほどの騒音がお堂の空間にけたたましく鳴り響いていました。

 

 このように今年の冬は雪道を歩き回る機会が多く、雪の上を歩く体の使い方にも少しは慣れたような気がしていたので、H中学校の前ではその油断から転んだわけです。生徒の分をこのように転んでおいたわけですから、今年の受験も塾講師としてやることはやりました。では来月、結果を楽しみにしましょう。 

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