加奈陀人03と亜米利加人12が来た02

前回の続きです。前回はALTのカナダ人女性に直接英語のレッスンを受けて喜んだ日本人男性の話でしたが、今回はもうひとりのアメリカ人女性との会話です。

この方は日本に来る前から日本のアニメに影響を受けて、日本語の勉強を開始。三年の勉強ののちにALTとして来日し、五年間日本で教鞭を執っているとのことです。

もうちょっと詳しく言うと、アニメはナルトのことで、はじめは英語で観ていたものが、どこかから英語の翻訳がなくなり、日本語でしか観られない状態となって、観てみたら日本語の持つ雰囲気や音が自分に合っている感じがして楽しくなって勉強した、というのがきっかけでした。なぜ私がここまで詳細にそのいきさつを覚えているかというと、彼女はこれを全部日本語で言ってたからです。いやいや、別に日本語達者な外国人なんてたくさんいるじゃないですかとは言いますが、サブカルチャーを含めた文化の面から外国人を惹きつける例は、立ち会えると本当にうれしいものです。

かくいうワタクシも学生時代はアメリカの音楽を熱心に聴いたもので、偶然サンフランシスコ出身という彼女に対し、サンフランシスコのロックこそ世界でもっともカッコいいもんで、私はそれに影響を受けて英語を勉強したと言いましたが、これにはピンときていないようでした。逆にナルトの良さを熱心に語る彼女に対して理解が及ばず、つまりこれは自分の良いところは案外他人の方がよく見えるという例なのかもしれません。

その彼女、日本以外にもあちこち海外での長期滞在経験がおありで、姫路城のトイレの説明をした後に世界のトイレ事情の話に花が咲きました。彼らにとっては和式というだけでエキゾチックであり、垂直に備え付けられた板の役割が何なのか、想像をかき立てます。親がポーランド出身とのことでまずポーランドのトイレ事情を伺いましたが、地面に穴があり、squatting styleなんだけど、穴の中に受けるpotはない。どういうことかというとそのまま埋めるようで、そんなのがあちこちであったとのことです。ニュースではポーランドといえば今やウクライナ人の避難者を受け入れる進んだ国のように思えますが、西側との差はまだまだ大きいことを想像できる話です。(ちなみに10年前くらいの話のようです)

私は中国やタイの扉のない(あるいは最低限しかない、あるいは床がない)トイレの話をシェアしましたが、辛い食べ物が多い中、腹を壊してそれをせねばならんのは大変つらいと言うと共感してくれました。これも裏を返せばロボットみたいなトイレで生活している我々の方が少数派だということかもしれません。

こんな話をしていると彼女が、それをいうならインドは最も大きい冒険であったと、話し始めました。トイレ事情は当然劣悪、何でも川に流す、物乞いしてくる等々、昔からよく言われるインドの話をシェアしてくれましたが、最後に、でも「humbling」だと言いました。私がなぜそこでhumble(謙遜する)という単語が出てくるのかと聞くと、英語と日本語で長い説明をしてくれました。物がない、汚い、危ない、しかしながらそういう経験を通してありがたみが分かるみたいな感じだったか。

humbleを語源辞典で引くと、human、humiliate(自尊心を傷つける)、ホモ・サピエンスのhomoなどが同語源で、土とか地面とかから下というニュアンスが出てきたとあります。よって自分を下にするから謙遜です。ヒトが地面から出てきたみたいな説明はありませんでしたが、どこかで聞いたことがあるような話です。

謙遜の文化にいる我々からすると得意分野なはずですが、誰が何にhumbleしているのか、この場合ではなかなかしっくりいかず、うーんと首を傾げていましたが、何かを言わんとしていることは分かる(つまりほとんど分かっていない)と伝えてその話は終わりました。

さて、他の辞書でいろいろ調べてみると、「自分を卑小な存在だと感じさせる」という意味がありました。「屈辱的な」という意味もその隣りにいますので、編纂者的にはどの意味もネガティヴな意味として載せているはずです。しかし彼女が使ったのは「いい意味で自分がちっぽけだと思わせてくれて、インドでの生活中少しのものにありがたみを感じることができたり、帰国後日常生活に戻ったときにはいわずもがなである」という意味だったのでしょう。さて、そんな感じを一言の日本語で言い表せるでしょうか。

彼女も日本語話者なのでちょっとの間一緒に考えましたが、出ませんでした。これは私の日本語能力の問題かもしれませんが、今でも出てこないので仕方がありません。ともかくそんな宗教的(インドの話だからという固定観念)というか神々しい感覚を一言で表すhumblingという言葉に敬意を示し…「敬意を示す」でよかったのではないか!?という締めくくりでした。

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