ウィリアム・カムクワンバ/ブライアン・ミーラー著、田口俊樹訳「風をつかまえた少年」(文春文庫)

 

「どんなことも可能になるのは、夢が人の心という動力源を得たときだ」

マラウイ共和国はアフリカ大陸西部、タンザニアの東隣の内陸国である。主産業は農業、世界最貧国のひとつ。中3英語教科書に「We Can Change Our World」というタイトルの読み物があり、廃品から独力で風車を作る14歳の少年の写真がある。さらに国語教科書の推薦図書にも挙げられている。

主人公ウィリアム・カムクワンバ少年が電気を起こす仕組みを図書館の本のみで調べ、廃品を集めながら風車を作るのは後半からで、前半はマラウイの地方の村の風景と、発展途上地域に襲う飢饉の恐ろしさが語られる。過酷な自然環境のみならず、農業知識の遅れ、政治の無策さ、魔術信仰による科学への不信など、人災による状況の長期化、深刻化は、同じ21世紀に生きる我々からは想像もつかない甚だしさで胸が痛む。この5章から8章までがこの本の真の読みどころで、知人や最愛の犬を亡くすだけでなく(犬を失うシーンは悲しすぎる)、家に明日食べる物すらなくなって、一家は餓死寸前の生活を余儀なくされる。学費が払えず学校も中退。その苦しみの中で、家族や村の人々を楽にさせたい想いから少年は風車作りに取りかかるのである。

風車を作り上げ、家に電気を供給してからも、部品の改良や他の実験の失敗、挙げ句この風車が雨雲を吹き飛ばしたという村人の苦情にあうなど困難は続くが、やがてマスコミや科学者たちに発見され、大統領が訪問するほどの時の人となっていく。マラウイの問題を世界に発信したことが最大の功労であろう。しかし少年自身はマラウイのインフラ改善という大きな任務に胸をときめかす。一冊の本との出会いが人生を変える奇跡を目の当たりにするような読書体験である。

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