藤原正彦「若き数学者のアメリカ」(新潮文庫)


おもしろい!!の一言。

この本は現在我らが姫路文学館の館長をお務めになられている数学者にして文学者にしていろいろな肩書きを持っておられる藤原正彦氏の、若き日のアメリカ体験記である。昭和52年に最初の出版、文庫本として平成26年には39刷、39とは!長く読み継がれているエッセイである。

1972年にミシガン大学に研究員として招かれた氏は、様々な都市を旅しながら、滞在中にコロラド大学の教授の座を得て、3年間アメリカで過ごす。やがて氏は、情感のないミシガンの冬と自身のホームシック、外国人としての排斥感のミックスに悩み、死を意識するほどの孤独に陥る。彼女ができないことをその一因とし、日本でも経験のないナンパを繰り返し全敗、さらに落胆を深める。南部のフロリダでブロンドの女性と仲良くすることでやっと鬱積を解消。エリートのやることとは思えない氏の豪傑ぶりが若者の真剣さで語られる。その他、ラスベガスで持ち金全部を使い果たしたり、全裸で外を走る、など、若さ満載の旅行記。おもしろい!

サイドメニュー的な読み方であるが、英語学習についてもいくつか触れられている。例えば、一般人のスラングを丸覚えして使う技を体得したが、フォーマルな自分の学習英語に突然「ひでぇ」「ズラカル」などが混在することになり、知っておくのはいいが、深い意思疎通を目指すにしても、使える必要は全くないと断言している。おもしろい!

藤原正彦氏は、父新田次郎、母藤原てい(共に作家)の次男。中学国語教科書の読書案内から選書するこのブログにとっては、ご両親の作品もいずれ取り上げることになろう。母てい氏の「流れる星は生きている」に出てくる3歳の「正彦ちゃん」が成長して戦勝国アメリカに一発お見舞いしに行くと考えるとこの本は続編と読めて、やっぱりおもしろい!

Follow me!